刑事裁判と民事裁判の違いと特徴を分かりやすく解説

裁判所

裁判とは何か?

裁判とは、利害関係に争いが生じた場合に解決・調整するために第三者である裁判所が双方の言い分を聞いて判断する手続き、と捉えることができます。その裁判は刑事裁判・民事裁判・行政裁判の3つに分類されますが、ここでは刑事裁判と民事裁判の違いについて説明します。

“被告人”と“被告”の違い

誰もがテレビのニュースで聞いたことのある“被告人”と“被告”という用語がありますが、この違いを明確に理解しているでしょうか。被告人は刑事事件で犯人だと疑われている人で、被告は民事事件で訴えられた人、とイメージすれば理解しやすいです。ニュースで警察に逮捕された人の映像を見かけることがありますが、この場合は刑事事件の扱いになります。民事事件がニュースで取り上げられることはほとんどありませんが、10年以上続いている裁判が終わった場合などに、まれに報道されることがあります。

刑事事件と民事事件の違い

それでは、刑事事件と民事事件の違いは何でしょうか。

刑事事件の特徴

刑事事件は、殺人・強盗・窃盗・横領・詐欺など、民事事件は相続・離婚・損害賠償・交通事故・債権回収などに分類されます。刑事事件で裁判を起こすのは、国を代理した検察官です。検察官は司法試験に合格した法律のプロフェッショナルであるため、その検察官に対抗できるように犯人だと疑われた被告人は、こちらも司法試験に合格した弁護士に依頼する権利が認められています。

ドラマで見たことがあると思いますが、刑事事件は疑わしい人をまずは警察が逮捕します。逮捕後は警察で取り調べを行ったうえで、犯人に間違いないとの確証が得られた場合に初めて、検察官が再び取り調べを行います。検察官での取り調べでも「この人は犯人に間違いない」という確証が揃った場合に検察官が刑事裁判を起こします。

日本では、被告人が刑事裁判を起こされると約99%の確率で有罪判決が出ています。つまり、前科者になってしまうということです。

ドラマでは無罪判決を獲得するシーンもありますが、実際には至難の業だと言えます。ほとんどの場合が有罪判決になりますが、刑事裁判は犯人だと思われている被告人に対して、刑法で定められている罰を与えることが適切かどうかを裁判所が判断する手続きが行われます。

つまり「被告人は無罪である」という無罪推定から始まり、検察官が被告人を犯人であることを証明する資料を順次提出するイメージを持てば理解しやすいかと思います。なお、被告人が無罪の立証を積極的に行う必要性はありません。検察官が有罪を立証できなければ無罪、という考え方が根底にあります。

日本国権法第31条でも

「何人も法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない」

として刑事手続きの保障をしています。

さらに、この憲法を受けて刑事訴訟法1条では、刑事訴訟の目的が、公共の福祉と個人の基本的人権の保障を全うしながら、案件の真相を明らかにして、刑罰法令の適正・迅速な適用実現をすることにあるとしています。

民事事件の特徴

それに対し民事裁判には、人対人という図式があります。ここで言う“人”には株式会社などの法人も含まれます。民事事件は人と人との争いなので、場合によっては弁護士に依頼しないで裁判に対応することも可能です。これを本人訴訟と言います。

基本的に「お金を払ってください」「離婚を成立させたい」など、訴えた側の原告と訴えられた側の被告が対等な立場でそれぞれの主張を行い、それぞれの主張が正しいことを証明するために様々な証拠資料を提出し、最終的には裁判所の裁判官が判決を下します。

場合によっては、裁判官が「和解をしたほうがいい」という判断を下して、判決を出さずに和解を勧めることもあります。民事裁判の最終的なイメージは、どちらかが金銭を支払って終わりを迎えるケースがほとんどであるとお考えください。

また、民事裁判は大きく分けると

  • 簡易裁判所
  • 家庭裁判所
  • 地方裁判所

のどこかで、まずは行われます。どの裁判所で行われるかは、弁護士に依頼した際の内容や請求金額などで決められます。

案件別に分類すると、相続問題と離婚問題は家庭裁判所か地方裁判所で、交通事故と借金問題は地方裁判所、といった具合です。請求金額が140万円以下の場合は、簡易裁判所で行われます。

例えば、金銭の貸し借りで揉めている額や過払い案件で相手方に請求するする額が140万円以下のケースなどです。法律のスペシャリストである弁護士だけが裁判の手続きに関われるとされていますが、簡易裁判所の一部の裁判においては、代理人として司法書士も裁判の手続きや折衝行為を行うことができます。裁判とは無縁だと思っていても、日々の生活の中で思いがけないトラブルに巻き込まれて、弁護士に依頼することがあるかもしれません。

しかし、弁護士業界は司法制度改革により弁護士の数が急増したため、大競争時代に突入しています。刑事裁判と民事裁判の違いだけでなく。弁護士の上手な選び方も理解する必要が生じています。